辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
 おいしいものは心を豊かにしてくれるし、人生の幸運度が爆発的に上がる。辺境伯領の食材は豊富だし――ほとんどが魔物素材であるけれど――これからも、エルの居場所が失われることはないだろう。

 騎士団員達の様子を見ていたら、ジャンが待機場所を離れるのが見えた。もしかして、先ほど作り方を教えたナッツに、何か問題でも発生しただろうか。

 こっそりジャンのあとをついていくと、城の敷地の端にある墓地を訪れていた。

(……ここは)

 ここは、辺境騎士団の団員達が眠っている場所だ。

 騎士団員達は、高度な訓練を重ねているけれど、死者がゼロというわけにもいかない。ジャンの兄は、もともとロドリゴの副官だったというから、思うところがいろいろとあるのかもしれない。

「きっと、あなたが生きていたとしたら」

 不意にジャンの声が響く。もと来た道を引き返そうとしていたエルは、思わず足を止めてしまった。

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