辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
「私は、今みたいな地位にはいなかったかもしれませんね」

 ジャンは、ロドリゴの副官となっている今の状況に不満があるのだろうか。それを問いただそうとし、でも、エルは口を閉じてしまった。

 エルが口を挟んでいいような問題ではない。

(……でも)

 毎年この時期にジャンの元気がなくなるというのは、皆に取っては心配なことかもしれないけれど。ジャンにとっては、兄の存在を改めて胸に刻みつける大切な時期なのかもしれない。

「エル様」
「ひぇぇっ!」

 ぼーっと考え込んでいたら、ジャンがすぐ傍まで来ていた。盗み聞きしていたわけではないけれど、エルは手をばたばたと振ってしまう。

「べ、別にジャンをつけてきたわけじゃないんだからねっ!」
「存じておりますよ。ねえ、エル様。ひとつ聞いていただけますか?」
「エルに話す?」

 子供に、何を話そうというのだろう。ジャンはすっと目を伏せた。

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