辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
「ジャンは、ジャンだし、お兄さんは、お兄さん。エルはお兄さんのことは知らないけれど、ジャンのことは好きよ?」
「……エル様」

 ほっとしたような、泣き出しそうな、そんな顔をしていた。エルは、胸の前で腕を組んだ。ふん、とその場で胸をそらす。

「エルは、難しいことはわからない! そして、ジャンの話は難しい!」
「難しい、ですか――たしかに、そうですね」

 ジャンの顔が苦笑いの顔になった。

「抱っこしてくれたら許す」
「かしこまりました」

 何を許すのか、それはエルにはわからない。というより、何か許す必要があったのかどうかも謎だ。

 けれど、これで少しでもジャンの気持ちが楽になるのなら、エルを抱き上げ、連れ回せばいい。

 このぐらいしかエルが騎士団に貢献できることはないのだし。

「ジャンは、辛いナッツと辛くないナッツ、どっちが好き? エルは辛くないの。甘いのがいい」
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