辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
 エルの命の恩人達の母親であり、現在進行形でお世話になっている人の妻。

 一応料理人としての役目は与えられているけれど、エルのやっていることなんて厨房での監督ぐらいのものだし、胸を張って働いているとは言えないと思う。

 せめて、お世話になっているお礼と挨拶ぐらいはしたいところだ。

「おー、母上もきっと楽しみにしてるぞ」
「お着替えしなくちゃ!」

 ぱっと自分の姿を見て気が付いた。

 今まで厨房でクッキーを作っていたから、エプロンが粉まみれだ。辺境伯夫人が来るというのなら、彼女のおやつに出してもいいだろうか。でも、その前に身なりを調えなくては。

「クッキー焼いて、着替える」
「着替えなくて大丈夫。エプロンだけ外せば」

 寝かせておいた生地を細かく切り分け、大急ぎでジェナに乗せていく。完璧なフライパンであるジェナは、すかさず焼き始めてくれた。

「いい香り……」

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