辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
 厨房に漂う甘い香り。冷ますために網の上に並べたところで、粉まみれのエプロンは、洗濯ものを入れる籠にポイ。

「ハロにぃに、エルの服、おかしくない?」
「エルはいっつも可愛いぞ!」

 辺境伯夫人の前に出るのにちゃんとした服じゃなくていいのかと思って聞いたけれど、ハロンの答えはエルが期待していたものとはだいぶ違った。

(……まあ、いいか)

 辺境伯夫人も、エルが身軽な服装をしていたところで叱らないだろう、たぶん。

 今までの辺境伯家の人々の様子からそう判断すると、エルは辺境伯夫人を出迎えるための列に加わった。

 

 馬にまたがった一行がやってきたのは、エルが列に加わってすぐのことだった。

 護衛の騎士が五人、六人。

(あれ、辺境伯夫人は?)

 護衛の騎士は見えるけれど、辺境伯夫人らしき人はいない。

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