辺境騎士団のお料理係！～捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります～

　この家の主は、前妻が亡くなるとすぐに再婚して現在四歳の娘がいるのだが、この部屋の娘と彼女の扱いは雲泥の差だ。
　二年前、毛布の中にくるまっている子供が三歳の誕生日を迎えた頃からそれに拍車がかかるようになった。

彼女の周囲で異変が起こるようになった。けらけらと笑う声を耳にし、部屋を見たメイドが仰天したのは一度や二度ではない。

　ぬいぐるみが部屋中を飛び回り、あるいは娘の前にきちんと座り、ままごとのお付き合いをしていた。

　遊び疲れてしまった子供に毛布をかけてやろうと近づく前に、毛布が勝手に宙を飛び、娘に自ら覆いかぶさったこともあった。

　こんな普通では考えられない事件が続き、彼女はこの部屋に押し込められるようになった。伯爵家は今や瀕死の病人がいるかのように皆息をひそめて暮らしている。

「私、もうこのお屋敷辞めたい……」