辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
 そして、ある日、エルの周囲で不思議なことが起こり始めた。勝手に開いたり閉じたり、風もないのにひらひらとするカーテン。

 飛び回る食器に、ガタガタと動き回る家具。呪われている子だと、エルは一人放っておかれることになった。

「――それから?」

 こわごわとした様子で、ラースが問いかける。エルは、ロザリアの胸に顔を埋めた。

 あの時のことは、思い出したくもない。

「……知らないおじさんにおうちから連れていかれたの。『しまつしろ』って言ってた」

 ずっと縛られ、荷車に転がされ、いつ殺されるのかとずっとそわそわしていた。

 縄で手足を戒められたまま、地面に放り出され、そしてそのまま取り残された。

(もう駄目だと思った)

 あの時、しゅるりと縄は勝手に解け、そして、誰かの声が耳の側で聞こえたような気がした。導かれるままに歩いて――。

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