辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
 本当に、どこにも行かなくていいだろうか。ずっと、辺境伯家にいても、叱られないだろうか。

「父上。エスパテーラ伯爵家を許すつもりですか?」

 と、ラースが立ち上がった。彼の目には、怒りの色が満ちている。

「僕に何かできますか? いっそ、今から焼き討ち――いや、焼き討ちでも生ぬるい?」
「落ち着け、メルリノ」

 普段はおとなしいメルリノが焼き討ちだなんて言い出すのはめったにない。ロドリゴも、さすがに苦笑した。

「今すぐ領地に帰ろう父上! それなら、エルを連れていかれないですむでしょう?」

 ハロンにいたっては、早くも領地にエルを隠すことを考えているらしい。

 辺境伯家にいるのはもう知られているのだから、領地に逃げたところできっとすぐに連れ戻されるだろうに。

 エルを抱き上げたままのロドリゴは片方の手をハロンの頭に置いた。

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