辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
「一緒に行ってもいいですか?」
「いってらっしゃい」

 優しく目元をほころばせて言うので、こくりとうなうずいて返す。そして、イレネの方に向き直ってぺこりと頭を下げた。

「エルです! どうぞ、よろしく、お願いします」
「可愛い!」

 時々、保護された当時のようなたどたどしいしゃべり方になってしまう。

 けれど、それも他の人達の目には可愛らしく映るようだった。

 手を引いてエルをその場から連れ出したイレネは、子供用のテーブルでエルにお茶とお菓子を出してくれた。

「エル嬢は、どのお菓子が好き?」
「甘いものは何でも好き!」
「それなら、このクッキーをあげるわ」

 ありがたくお菓子の皿を受け取りながらも、エルの耳は大人のテーブルで繰り広げられている会話に釘付けである。

「でも、エスパテーラ伯爵家のお嬢さんって……」
「亡くなったと聞いていたのだけれど」

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