辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
 庭に持ち出された樽に座ったエルはにこにことして、彼らがグラスをぶつけてくるのを受け入れた。エルのグラスに入っているのは、ジュースだったけれど。

 けれど、不意に庭がざわざわとし始める。串に刺してじゅうじゅうと焼かれた肉や、酒のグラスを手にしたまま、騎士達がさっと左右に割れた。

「王様?」

 口にしてから、陛下と呼ばなければいけなかったのかなと思い出した。慌てて座っていた樽から飛び降りようとすると、「よい」とそのまま手で制される。

「小さなそなたに、多大な苦労をさせてしまったようだな。伯爵の行動に気づかなくてすまなかった」
「それはもういいです。お父様とお母様に会うことができたから」
「そうか。そなたは強いな」

 感心したようにそういった国王は、エルに銀の札を差し出していた。エルがきょとんとしていると、彼は軽やかな笑い声をあげる。

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