辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
 荷台に転がされている子供は目を瞬かせた。泣いては駄目だ。涙は封じておかないと、気づかれたら頬を叩かれる。

 馬車の振動に身を任せ、時折とろとろと眠る。強引に起こされたかと思うと、口に水筒があてがわれたり、食べ物が押し込まれたりした。空腹も、喉の乾きもまったく覚えていないのに。

 何日過ぎたかわからない。だが、何度か明るくなったり暗くなったりを繰り返したのはなんとなく覚えている。

 そんな日を繰り返し、やがて荷車から下されたのは、深い森の中だった。

「やれやれ、途中で死なせないようにするのが面倒だったな」
「とりあえず、殺してそのあたりに死体は転がしておけばいい。魔物が食いつくしてくれるさ」

 死なせる? 殺す? なんで、こんな目に……けれど、逃げ出すなんてできるはずなかった。子供の手足はしっかりと戒められていたから。

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