辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
「じゃあ、僕は野菜を洗ってきます」
「俺は? 俺も手伝う!」

 樽を運んできてくれたのは、ラース。食事用の野菜を洗いに行ったのはメルリノ。ラースの横で、ハロンはびょんびょんと飛び跳ねている。

「ハロにぃには、お塩、胡椒、探してください」

 心のどこかでは甘えすぎではないかと思うけれど、舌が回らないのだからしかたない。しばらくの間は「にぃに」呼ばわりを我慢してもらう。

 エルが見る限り、喜ばれているような気がしなくもないが。

「メルにぃに!」
「はーい」

 手を振ると、野菜を洗っていたメルリノは顔だけこちらに向けてくれる。うん、大丈夫だ。問題はない。これがエルとしての初仕事だ。本当は自分で切りたいけれど、失敗はできない。

 背伸びをして、調理台の上をのぞこうとする。少し離れたところに包丁が置かれていた。

「お野菜、切る……切る、る……?」

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