どうやら私、推しに推されてるみたいです…。
心の中で春木くんに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
しかし、当の凪音くんはというと…。
「何?駄目?」
と、周りが戸惑っている理由を理解できていないのか逆に春木くん達に問いかけている。
「いや、駄目とかじゃないけどさ。ほら!中学の時の元カノとかと比べたら委員長って全然タイプ違うから。ちょっと驚いたつーか…」
最後の方は、言いにくそうに口ごもった春木くん。
オブラートに包んではいるが、要約すると「元カノは可愛かったのになんで委員長?」と言いたいのだろう。
その部分に関しては私も全く彼に同意見のため、傷つくとかはない。
むしろイケメンの隣には、ぜひとも好みの美少女がいてほしいとさえ思うくらいだ。
ただ…。
自分の話題が出ている中、鞄を取りに行く勇気は私にはなかった。
教室の中に入るタイミングを伺いながら、「どうしよう…」と立ちすくんでいる私に向かって。
「おーい!瀬川〜!数学の課題確認したぞ。ありがとな」
ビクッ。
なんとも間の悪いことに廊下の端の方から、声をかけてきたのは、数学の田中先生だった。