どうやら私、推しに推されてるみたいです…。
ちょっと待って。
今、凪音くん、面と向かって私のこと"可愛い"って言ったよね?
頭の中で反芻(はんすう)すると、その威力は絶大で。思わず、カーッと頬に熱が集中するのがわかった。
お、落ち着くのよ、芽結。
今のは、推しにファンサをもらったみたいなもの。昔、好きなアイドルの握手会に行った時だって、『可愛い』とか『いつもありがとう』とかファンサもらってたじゃない…!
そう納得をし「筧くんってば、またまた〜。お世辞がうまいんだから」と言葉を紡ぐ。
しかし、そんな私の返答になぜか小さくため息をこぼした凪音くんが何か言おうと口を開いた瞬間、
〜♪
スマホの着信音が鳴り響いた。
私のものではないから、おそらくは凪音くんのスマホだろう。
「……」
口をつぐみ、ほんの少し不機嫌そうに自分のスマホをポケットから取り出した凪音くんは、画面を確認すると。
「…ゴメン、委員長。俺、そろそろ帰らないとだった。今日は勉強教えてくれてありがとう」
申し訳なさそうにそうつぶやいた。