どうやら私、推しに推されてるみたいです…。
優しいな。
隣を歩く彼の横顔をそっと盗み見る。
先ほど抱きしめられたことを思い出すと、ドキドキと胸が高鳴った。
そんな私の視線を感じたのか、凪音くんが不意に私の方を見るものだから、パチッと視線が絡む。
「そういえばさ、委員長」
「…?」
「さっき俺のこと名前で呼んでくれてたよね」
「へ?」
ニヤリと微笑む彼の言葉に対し、私はキョトンとした表情を浮かべた。
名前…?
そういえば…。
『凪音くんが何でここに…!?』
階段で落ちかけ、凪音くんに抱きしめられたことで動揺して確かに、名前を口に出していたことを思い出す。
いつも内心、名前で読んでたからつい…。
「あ、あの。ごめんなさい…。つい、勢いで…!」
指摘されて、サーッと血の気が引いた私は慌てて弁明した。
馴れ馴れしいと引かれてしまったのではないかと心配になる。
しかし、そんな私の心配とは裏腹に。
「なんで謝るの?俺、委員長が名前で呼んでくれてたの嬉しかったのに」
「…ッ!」
あっけらかんとそんな恥ずかしいことを言ってのける凪音くんに私はぐっと押し黙ってしまった。