どうやら私、推しに推されてるみたいです…。

SAISONの話題になれば、胡桃ちゃんの興味がそちらに移るのはわかりきっている。

「サマーライブで全国回るんだってね〜。チケットとれそう?」

「もちろんよ!てか、死ぬ気でとる!倍率が高いのはわかってるけど、ファンクラブ会員から優先のはずだし、なんとかとれるはず!でね、芽結。なんとなんと、小雨くんが今度雑誌の表紙を飾るらしくてね〜」

その後SAISONの主に小雨くんについての熱い想いを語りだした胡桃ちゃん。

体育館へと向かう道中も。

「とりあえず、観賞用、保存用で2冊は最低買わないとだよね〜」

体育館へついてからも。

「今回のコンセプトがすっごく小雨くんにあっててね…!」

と、結局、始業のチャイムが鳴り終わるまで、彼女の話はつきなかった。

「じゃ、私こっちのチームだから!お昼休みにまたSAISONの話しようね」

「う、うん。あとでね〜」

そして、体育のバドミントンの授業が始まり、ようやく胡桃ちゃんから解放された私。

試合の順番を体育館の端で1人待っていると、なんだかどっと疲れが回ってきて心の中でため息をつく。

凪音くんの話題からうまくそらせたのはよかったけれど、胡桃ちゃんのオタク心をくすぐりすぎてしまったらしい。

楽しそうに推しについて語る彼女を見ていると、つい最近まで私も同じように胡桃ちゃんへ凪音くんの話をしていたことを思い出す。

でも、まさか推し公認で名前呼びをできる日がくるなんて…。
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