どうやら私、推しに推されてるみたいです…。

「キャー!カッコいい〜」

「頑張ってぇ〜!」

放課後、キャーキャーと黄色い歓声があがる体育館内。

どうやらバレー部が練習をしているみたいで、入口の方には学年問わず多数の女子生徒の姿が見える。

皆の目当てはもちろん…。

「筧くーん」

「凪音〜!ファイト〜!」

バレー部でエースの凪音くん。

わぁ…!カッコいい〜。

チラリと横目に見えた凪音くんの姿はまさに眼福。

楽しそうに身体を動かしている推しの姿に内心うっとりしてしまう。

私自身、普段の練習の際には、人が多いと邪魔になるだろうと思ってなるべく体育館の方へは来ないようにしていて。(もちろん、他校との練習試合の時、来れる時はひっそりと応援しに来たりはしてるんだけどね)

ちなみにそんな私が、本日どうして体育館にいるのかと言うと、時は数十分前に遡る――。



『あれ?家の鍵がない?…』

胡桃ちゃんと一緒に帰りの準備をして、鞄を確認した時だった。

いつも内ポケットに入れてあるはずの家の鍵が見当たらない。

『えー?どっかに落としたんじゃないの??』

大変じゃん!と、目を見開く胡桃ちゃんを横目に私は朝からの出来事を思い起こしてみた。

『う〜ん。あ!そういえば体育の着替えの時、短パンのポケットに入れたんだ…!』

そう思い出して慌てて、体操服の短パンのポケットを探ってみるも。

『あれ?ない…』

両方のポケットはどちらも空だった。
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