どうやら私、推しに推されてるみたいです…。
ヒソヒソと囁かれるそんな会話。
そして、グサグサと刺さる凪音くんファンの女子たちの視線が痛い。
ちゅ、注目されてる…!?
普段はほぼ空気のような存在感の私に対しては、かなりハードな局面で、思わずタラリと冷や汗が頬をつたった。
「あ…えっと。ちょっと落とし物をして…」
「え?何落としたんだ?」
「その…。家の鍵を…」
アハハと苦笑いを浮かべる私。
「マジ?家の鍵って大変じゃん。うーん、ちょっと待ってな」
「へ?ちょっと…凪音くん」
少し考え込んだ凪音くんだったが、次の瞬間には、慌てる私をよそに駆け足で飲み物を準備しているマネージャーのもとへと駆けて行く。
「あのさマネージャー。この辺に鍵落ちてなかった?」
「鍵…?凪音が落としたの?」
バレー部のマネージャーで、美人と有名な3年の里愛先輩が、突然やって来た凪音くんに驚いたような視線を向けていた。
「いや、俺じゃないんだけど…。クラスメイトが落としたって」
なぜか少し口ごもる凪音くん越しに、里愛先輩と視線が絡む。
ドキッ。
やばい。里愛先輩めっちゃ可愛い…!
サラサラのストレートロングの黒髪をポニーテールにし、綺麗なうなじがあらわになっている。
くるんとカールしたまつ毛に、白い肌。
華奢な手首がまくっているジャージの袖から、チラッとのぞいているのもツボだ。
まさに、守ってあげたくなる女子の代表。
そんな里愛先輩に見つめられて思わずときめいてしまった私。
里愛先輩って、アイドルとかしたら絶対推しちゃうのになぁ。