どうやら私、推しに推されてるみたいです…。
私の名前は、瀬川芽結。
高校2年の16歳。
身長156センチ。
真っ直ぐな黒髪は、ちょうど肩の位置で切りそろえられ、黒縁眼鏡をかけている。
校則で決められたジャケットに、スカートも膝丈。
見た目は、今どきの女子高生と言うには少し地味めかもしれない…。
制服もバッチリ校則通りに着こなしている現在の私のあだ名は"委員長"。
理由は簡単、クラス委員長をしているからという安直なもの…。
まぁ、クラス委員長をするくらないなので、周りからはそこそこ真面目女子で通っている。
そんな私にも、密かな楽しみがあった。
それは、同じクラスの筧凪音(なお)くんを推すこと。
筧凪音くんは、同じクラスの男子生徒。
バレー部のエースアタッカーで、他の部活から助っ人を頼まれるくらいスポーツ万能。
スラッとした高身長で、顔立ちは端正で、キリッとしたクール系。
けど、笑うと目尻が下がり、幼く見える所が可愛いと、学年問わず女子生徒からの支持を受けている。
「ハァ〜…つまんなーい。芽結ってば、筧を推しはじめてからアイドルは全部担降りしちゃったしさ〜」
胡桃ちゃんが、肩を落としてため息をついた。
そう。
実は、私、凪音くんを推し初めてからアイドルオタクをスッパリと卒業してしまった。
ちなみに中学時代は、超がつくほどのアイドルオタクだった私。
実は、胡桃ちゃんと仲良くなったきっかけも推しのアイドルグループが同じだったからなのだが…。
まぁ、とはいえ今でもアイドルは嫌いじゃないし、胡桃ちゃんの推しのライブとかには付き合いで一緒に行ったりもするから、彼女はそれで満足してくれているみたい。