冷徹御曹司かと思っていたら溺愛御曹司でした〜甘い束縛にとらわれて
休日の朝の早い時間で車通りは少ないとはいえ、おばあさんの歩くスピードでは、渡り切る前に信号が変わりそうでヒヤヒヤしてくる。
走るスピードを上げて、おばあさんに近づいた。
「おはようございます。一緒に渡りましょう」
驚かせないようにおばあさんの顔の高さに顔を下げて微笑む。
「あら、ありがとう」
左右を確認しながら一緒に渡るが、亀の歩く速度並みだ。
もちろん、彼女は一緒懸命歩いているのだろうが、信号が変わる前にこの大きな交差点を渡り切るのは難しいだろう。
おばあさんだけなら、おぶって渡ってあげれるが、乳母車にプラス重そうな荷物がある。
数メートル先で点滅しだす信号に焦るだけで、いい案が出てこない。
すると、大きな人影が前方に立った。
「失礼しますよ」
背丈のある鍛えているだろう体で、その人はおばあさんを横抱きし、砂羽を冷ややかに一瞥した。
「ぐずぐずするな。それを押して走れ」
苛立った冷たい声に促され、数メートル先までおばあさんの乳母車を押しながら駆け足で追いかけた。
渡りきり、フーと一安心してる間に、おばあさんを地面に下ろした男に、おばあさんは感謝の言葉を述べて重そうな荷物を漁る。