冷徹御曹司かと思っていたら溺愛御曹司でした〜甘い束縛にとらわれて
お昼過ぎに、そう言われて、家に行けば引越し業者のトラックが一台止まっていた。
「お疲れ様です。今日は、お願いします」
「えっ、そんなに荷物ないよ。いつの間に引越し業者を手配したの?」
訳の分からない砂羽は困惑する。
「必要な物は持って行こう。後は、レンタル倉庫行きだから、安心しろ。部屋は、いつでも帰れるよう借りたままにしておけばいい」
「半同棲でしょ。帰りたい時に帰ればいいって。それなのに、倉庫に預けたら、帰ってきた時、どう生活すればいいの?」
「だから、荷物は処分せずに倉庫に保管しておく。ここに帰る日があるとは思えないが、その時は、俺たちが同棲を解消した時だ。まぁ、そんなことにならないが、安心して暮らせる環境を残しておけばいい。できることなら、荷物も住む場も無くしてしまいたいと思っているが、
半同棲じゃなくなるからな」
そこで、まんまとのせられたと悟った砂羽は、霧矢の周到さに呆れると同時に諍うことを諦めたのだった。
砂羽の荷物を倉庫に預ける理由は、砂羽にはないが、霧矢には、易々と帰られたらたまったものじゃなくなるからだ。
今現在、霧矢と別れる未来が見えない砂羽は、(もう、この部屋に帰れる気がしない)と思う。
だが、言わずにはいられない。