愛する人と暮らす初めての日
 幼い頃から彼女は既にオリバーのもとにいたようだ。

 あの男のもとに来る前の記憶は朧げだが、確か家族と言える人たちがいたらしい。
 いつかその人たちが助けに来てくれないかと少しだけ期待していた時期もあった。

 だが何年もあの男のもとにいて、暴力を振るわれている間にそんな期待はしなくなっていたようだ。

 彼女にも家族がちゃんといたことに驚く。
 もし生きているのであれば、何故彼女のことを助けに来なかったのだろう。


 殆ど記憶がないので、どうしてオリバーのところにいたのかも、何年あの男のもとにいたのかもわからないそうだ。

 だから自分のことなのに、正確な年齢も誕生日も知らない。
 出身地も本当の名前がリーベなのかもわからないそうだ。

 小さい頃から暴力を振るわれていて、あの男から優しくされた記憶もない。
 なので誕生日なんて祝われたことがないし、そういうものがあることも本で読むまで知らなかった。

 妖精がどのくらいの速さで成長していくのか分からないが、幼い頃から暴力を振るわれていたことに憤りを感じる。
 許されるならあの男にも同じくらいの苦しみを与えてやりたい。
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