愛する人と暮らす初めての日
「思い出すだけでも怖かっただろうに、話してくれてありがとう」
話してくれている間ずっと俺にくっついていた彼女のことを抱きしめる。
少しは安心してくれたのか、体のこわばりが少し和らぐ。
「リーベありがとう。辛いだろうが、もう少しだけ聞いてもいいか?」
少尉の言葉に彼女がゆっくりと頷く。
何を聞くつもりなのか分からないが、彼女のことが心配で、俺の腕の中にいるリーベを見る。
「暴力は殴る、蹴るみたいなものだけだったか?」
「……他にも刃物で切られたりとか、熱湯をかけられたりとかはありました」
震える声で彼女が答える。
彼女があの男からされた仕打ちを聞く度に怒りが込み上げる。
だが、ここで怒りを露わにしても仕方がないのでそれをぐっ、と我慢する。
少尉は一度口を噤み、少し間を置いてから口を開く。
「他に性的なことをされたりとかは?」
「そんなことも聞かないといけないんですか?」
そんなことを聞かなくてもいいじゃないかと思い、少し声を荒げてしまう。
少尉はそんな俺に申し訳なさそうに声をかける。
「俺だって本当なら聞きたくないが、これも職務のうちなんだ。彼女が話したくないなら、無理に口を開かせるつもりはない」
冷静に考えれば少尉が意味もなく、あのようなことを尋ねる訳がない。
だがこれ以上彼女に嫌なことを思い出してほしくない。