愛する人と暮らす初めての日

「じゃあ、用も済んだし帰ろう。疲れてるのに、色々付き合わせてごめんね」

「ううん、大丈夫」


 イアンに挨拶をし帰ろうとした時、彼女に呼び止められる。
 他に何かやり残したことがあっただろうかと彼女を見る。


「あの、イアンさん。昨日は運んでくれたのもそうですし、リュカの目が覚めるまで話し相手になってもらいありがとうございました」

「ああ、そんなの気にしないで。リーベと話すの楽しかったし。また話し相手になってくれたら嬉しいな」

「はい、私もまたお話ししたいです」


 笑顔を浮かべる彼女の頭をイアンが撫でる。
 お前がリーベに触るなと思うが、彼女も嫌がっている様子ではないので黙って見る。

 彼女が首をこてん、と傾げてこちらを見てきたので、少しだけ繋いでいる手の力を強くする。

 彼女がイアンと挨拶を済ませ、今度こそ彼と別れる。
 あまり疲れた様子はないが、きっと疲れていることに気づいていないだけだろうと真っ直ぐ家に帰る。
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