俺様同期の溺愛が誰にも止められない
ムスクの香りで目覚めた朝
少しの間だけ、私は夢を見た。
見えてきたのは、真っ白な砂浜の波打ち際に腰を下ろした人影。

「碧、ここはいいところだろ？」
「うん、とっても素敵」
隣に座る父さんに体を預けながら、私が海を見ている。

その時、フッと父さんの香りがした。
この香りはムスク。
さすがに子供の頃にはわからなかったけれど、今は私だって知っている。

「碧ね、大きくなったらお医者さんになるの」
「そうか、それはいいなあ」
まだ小さな私が話す言葉にうんうんと頷き、父さんは私の頭をなでた。

私が育ったのは日本海に浮かぶ小さな島。
島民は数百人で、街にはスーパーと銀行と学校、あとは小さな診療所が1つだけ。
一応高校もあったけれど、本島まではフェリーで３時間もかかる孤島で、島民全員が知り合いの環境で私は育った。

「碧がこの診療所を守ってくれるのか？」
「うん、そうだよ」
当時まだ子供だった私は、医者になるってことの意味も知らずに言っていた。
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