俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「今年の夏休み、実家に帰省しようと思っているの」
「ああ、そう言っていたな」

もう3年も実家には帰っていないし、たまたま9月のはじめに遅めの夏休みが取れた関係で思い切って帰省することにした。
すでに飛行機のチケットも手配済で、日程は母にも知らせてある。

「母さんもすごく喜んでいてくれて、私も楽しみにしていたんだけれど・・・」
「何かトラブルでもあったのか?」
「そうではないだけれど、私の帰省を聞きつけた地元の偉い人が島にいる間に一度会いたいって言っているらしいの」
「ふーん」

元々、私は近いうちに島の診療所に戻る予定でいる。
2年後か3年後か5年後かはわからないが、島の診療所に勤務することは大学に入る時からの約束だった。

「お前、学費を出してもらっているんだったよな?」
「うん、地元に戻って勤務することを条件出してもらった返却不要の奨学金」

もちろん島には帰らずお金を返却することもできるけれど、それでは島の診療所がなくなってしまう。

「早く帰って来てくれって言われそうなのか?」
「おそらくね」

それっきり、私も素晴も言葉が止まってしまった。
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