俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「碧も飲むか?」

部屋着に着替えて戻って来た素晴が、ビールを差し出す。

「うん、いただきます」

豪華ではないけれど、出来立ての夕食を前に向かい合った。
それでも今日は普段より静かで、会話も弾まない。

「今日はごめんなさい」
夕食もほぼ終わりかけたころ、沈黙に耐えられなくなった私が口にした。

「何で碧が謝るんだ?」
「だって・・・」
理由はどうあれ、私が素晴を怒らせたことに間違いない。

「悪いのは碧じゃないだろ?だから謝らなくていい。ただ」
「ただ?」

寂しそうな顔をする素晴の心の中が知りたくて、私は聞き返した。

「自分勝手なのはわかっているが、碧にはよそ見をせずに俺だけを見ていてほしい。駄目かな?」
「そんなことないよ」

私だって素晴は特別な存在だと思っているし、少しでも長く一緒にいたい。

「怒ってごめん」
「違うよ、私こそ・・・んん」

ごめんなさいと言おうとしたのに、素晴に唇を塞がれた。
伝わる体温と回された手の温もりに、私は無意識のうちに体の力が抜けていた。
今日の昼間高杉先生に触れられただけで緊張していたのに、今はどこかホッとしている自分がいる。
きっとこれが特別だってことなのだろうと感じながら、私は素晴に体を預けた。
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