俺様同期の溺愛が誰にも止められない
それからどのくらい時間が経っただろうか、体調の悪い私には長く感じたが実際には数分だったのかもしれない。

「碧、大丈夫か?」
走ってくる足音と焦りを含んだ素晴の声。
次の瞬間には私は抱え上げられていた。

フワフワと浮かぶような浮遊感。
自分の体がどこかに運ばれている感覚はあっても、目が開けられず確認することはできない。
ただ伝わってくる体温は暖かくて、遠くの方でムスクの香りがした。

「バカだなあ、無理しやがって」

怒るというより呆れたような素晴の声がなぜか優しく聞こえる。
私は返事をすることもなく、ただ体を預けた。
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