俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「碧っ」

強めの口調で私を睨む素晴の顔が、テーブルをはさんで向こう側にある。
少しでも食べた方がいいと素晴が用意してくれた夕食を前に、私はソファーに座ったまま動かなかった。

「いい加減に食べてくれ」
「じゃあ明日から仕事に行ってもいい?」

私の不機嫌の原因。それは素晴が私の勤務にドクターストップをかけたからだ。
今夜一晩ちゃんと寝て明日からも気を付けて過ごすからと言うのに、「救急で診察した担当医として許可できない」と折れてはくれない。

「しばらく休むんだ」
「・・・できないよ」

結局また同じ会話の繰り返し。
明日から勤務に戻りたい私と、数日間は自宅療養すべきだという素晴。
「そんなこと言うなら何も食べたくない」と言ってしまったことをきっかけに言い合いになってしまった。
正直元から食欲はなかったし、仕事を休むくらいなら今は食べたくない。

「具合の悪い医者なんて何の役にも立たないだろ、だから今はしっかりと体を治すべきなんだよ」
「そんな・・・」

心配してくれるのはありがたいと思うけれど、素晴は少し過保護だ。
相手が私でなく例えば円先生だったらここまで頑なではない気がするし、相手の意見を認めて折れてくれる気もする。
それができないのは私が危なっかしくて信用できないってことだろう。

「もういい」
私はソファーに倒れ込み、近くにあった毛布を頭からかぶった。
< 152 / 198 >

この作品をシェア

pagetop