俺様同期の溺愛が誰にも止められない
空港から実家まではタクシーで30分。
懐かしい街並みを見ながら、私は大阪の喧騒を思い出していた。
素晴のマンションから見る景色も、一緒に食べる夕食も、買い物帰りに食べたたこ焼きも大好きだった。
ついこの間まで故郷の島を思い出していたのに、今は大阪の暮らしが、いや素晴との時間が懐かしい。

「あれが診療所?」
「あ、うん」

見えてきた実家と隣に立つ診療所。
今は閉院して来る人のいない診療所も、母さんが手入れしてきれいに保っている。

「いいところだな」
「うん」

海沿いの国道に隣接し、診療所からも自宅からも海が見える場所。
その分風も強くて台風の時期には大変だけれど、私はここから見る景色が大好きだ。

「お帰り、碧」

タクシーから降りて海を眺めていた私に、母さんの声がかかった。
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