俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「一通りの物はそろっているんだな」
「うん、そうね」

今は閉院してしまった診療所の中を見て回りながら、素晴が感心している。
確かに、務めている大阪の病院ほどの設備はないけれど最低限診察ができる準備は整っている。
県のドクターヘリ導入で搬送体制も整っているようだし、父さんがいた頃よりも随分と環境は整備されているように見える。

「遠隔での診断もできるんだな」
「本当だ」
本土とネット回線でつなぎ、島にいながら本土の医師の診察が受けられるようにもなっている。

「すごいな」
「うん、びっくり」

決して私のためではないのだろうけれど、これだけの機械を入れて整備するのはお金だってかかるはず。
もちろん県のへき地医療対策として予算が出るけれど、診療所の設備すべてが補えるはずはない。
きっと島の予算が使われているのだろう。
そしてそれだけのお金をかけるのは、近い将来私が帰ってきてここを復活させると思っているからだ。
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