俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「お父さんはここに座っていらしたんだな?」
「うん」

診察室のデスクの前に置かれた椅子。
そこが父さんの席だった。
父さんはいつもここにいた。

「座ってもいいか?」
「ええ、どうぞ」

ギシッと音を立てて座り、体を預ける素晴。
クルリと椅子を回し海を見るその背中が、なぜか父さんに見えた。

ヤダ、泣きそう。
私は少し顎をあげて、窓越しの海を見る。

「いい眺めだな」
「うん」

私のために父さんはこの島に来た。
この島のお陰で私は元気になり、生きてこられた。
だからってことではないけれど、ここに帰ってくるのが私の運命なんだ。
< 190 / 198 >

この作品をシェア

pagetop