俺様同期の溺愛が誰にも止められない
数十秒後。

「なあ、水野碧」

耳元でフルネームを呼ばれ、一人現実逃避しようとしていた私はゆっくりと目を開ける。

「う、うわあ」
余りにも至近距離にあった影井の顔に、つい声が出た。

「酔っぱらって男の部屋に連れ込まれるとか、何をされたのかの記憶もないとか、女子としての危機管ができなさすぎだ。世の中親切な奴ばかりじゃないんだから、もう少し用心しろ。断れずに酔っぱらうくらいなら、飲み会なんて出るなよ」
「・・・ごめんなさい」

何もかもがごもっともで、返す言葉がない。
すべて私の責任だし、自分自身が蒔いた種だ。
それでも、ひとつだけ影井に確認したい。

「それで、私達何かしたの?」
どうしてもそれだけは聞いておきたかった。

「いや、まだだよ」
え?

ポカンと影井を見上げた瞬間、
チュッ。
唇に触れた温かい感覚とムスクの香り。

嘘。
私、影井とキスをした。
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