俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「・・・・影井先生・・・」
「・・・本当だ・・・」

食事をほぼ終えた頃、遠くの方から聞こえてきた女性の声に私のフォークを持つ手が止まった。
マズイ。このレストランのどこかに病院の関係者がいる。
私は飲み物を取りに行くふりをして席を立つと、少し離れたところからあたりを見回した。

ここはホテルのメインレストランでその分広さもある。
ホテルの宿泊客だけでなく食事だけのためにくるお客さんもいるから、かなりの人で混雑もしている。
そんな中で・・・あ、いた。
レストランの入り口付近のテーブルにいた女性の二人連れの顔に見覚えがある。
確か・・・外科病棟の看護師。
あまり話をしたことは無いけれど、間違いないと思う。
どうしよう。
このまま影井と一緒にいれば根も葉もない噂が立ってしまう気がする。
それはいやだなあ・・・

色々と考えた。
偶然一緒になっただけと言い訳することも、他人の空似で逃げ切ることもできなくない。
けれど、噂好きの女子たちが見逃してくれる気がしない。
悩んだ挙句、私はこっそりと逃げ出すことにした。
< 26 / 198 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop