俺様同期の溺愛が誰にも止められない
開業医であり実業家でもある親父は、俺が子供の頃から誰にでも紳士的でダンディーだった。
そんな親父を見ていたせいもあって、自分に厳しく他人には優しくと心掛けてきたつもりだ。
人前で声荒げることもないし、ましてや他人を貶めるようなことをしたこともない。
常に冷静で、穏やかでいるように心がけている。
しかし、彼女にだけはそうもいかない。

頭がいいくせに要領が悪く損ばかりして、優しくて人がいいからと言って周囲からもいいように使われ、自分で自分の首を絞めている。
そんな彼女を見ているこっちとしてはもどかしくて仕方がなくて、出会った頃から強い口調で彼女に接していた気がする。
なぜ彼女にだけ辛口なのか、初めは俺にもわからなかった。

「偉そうに、まるで仕事のトラブルみたいに言わないでよ」
唇を尖らせ、彼女が恨めしそうに俺を見る。

確かに彼女にかかわるとつい反省会みたいな流れになってしまうのは事実だ。
真面目で一生懸命で、何事にも手を抜かず、ズルをせずに人の悪口を言わない。
指導医から何度も何度もダメだしされても諦めず前に進もうとする。
彼女にかかわった同期全員がそんな生き方を凄いと思っていたし、触発もされた。
俺達が大学創設７０年の歴史の中で唯一一人の脱落者も出さずに卒業した卒業生となったのは、彼女がいたからだと思う。
そして、いつの間にか俺は彼女のことが気になっていた。
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