俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「荷物を取りに来るんだろ?一体何を想像しているんだよ、バカ」
「バカって・・・」

本当にひどい言い方だと思う。
いくら同期にでも、バカなんて言葉を投げかけようとするあなたが、救命の最前線で働く医者だっていうことが時々信じられなくなる。
もちろん私以外の人の前では常に礼儀正しくて紳士的な影井だから、私が暴露したところで誰も信じないだろうけれどね。

「夕飯を用意しておくから食べていてもいいし、当直明けできつければ眠っていてくれてもいい。とにかく待っていてくれ」

影井が夕飯を作るってことはないだろうから出前でもとるつもりなのか、家事代行サービスに頼むのか、どちらにしても明日の夕食は影井の家でってことになりそうだ。

「何か持って行こうか?」

さすがにごちそうになるだけでは申し訳ないと声をかけたけれど、影井の表情は渋いまま。

「そんな気持ちがあるなら早めに仕事を片付けて来いよ」
「うん」
そうだねと、私はうなずいた。

要領の悪い私は、何をやっても人よりも時間がかかる。
働き出して3年目にもなり仕事には多少は慣れたけれど、この不器用な性格はどうにもならない。

「ちゃんと美味いものを用意しておくから、必ず来るんだぞ」
「はいはい」

なんだか食べ物で釣られた気がするのは私だけだろうか?
でも、今は仕方がないと思うしかなさそうだ。
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