俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「覚えられないなら、手帳でも、メモでも、スマホにでも書いておけよ」
「うん、これからはそうする」

「そのセリフ聞くのは何度目だろうな?」
「ごめん」

ひとつのことに集中すると他のことを忘れがちな私は、子供の頃から「メモを取りなさい」と言われ続けてきた。
私自身も気を付けて記録を残すようにしてきたつもりだ。
でも今回は、本当に忘れていた。

「で、どうするつもりだ?」
「えっと・・・まずいい部屋がないか探してみて、」
「期日までに1ヶ月ないんだろ?」
「そうだけど・・・」
「急いで決めれば後で後悔することになるかもしれないし、それにもし決まらなかったらどうするんだよ」
「それは・・・」

実際アパートには毎日帰る訳でもないし、しばらくの間なら医局に泊まることだってできなくはない。
問題は荷物が・・・

「まさか研修医の時みたいに医局に泊まり込むつもりじゃないよな?」
「も、もちろんよ」

さすが影井、私の行動を読んでいる。
でも、困ったぞ。
医局がダメとなると優紀の家にお世話になるしか方法がないけれど、さすがに荷物はどこかのトランクルームに預けるしかないだろう。

「仕方がないから、うちに置いてやるよ」
「え、いいの?」
しばらくの間荷物を置かせてもらえるのがうれしくて、つい飛びついてしまった。
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