俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「話を整理すると、ご両親は影井に帰ってきてほしいと思っていらして、影井の方はまだ帰る決心がつかないのね」
「ああ、まだ研修医が終わったばかりで、一人前とは言えないからな。せめてあと数年はこっちにいたい」

確かにその気持ちはわからなくはない。
私だってまだ一人前の医者として診療所を引き継ぐ自信がないからと大学病院に残っている。

「ご両親に話してもダメなの?」

私は母さんに話してもうしばらくはこっちにいさせてもらうことにした。
影井のご両親だって話せばわかってもらえると思うけれど。

「そんなに救命の勉強がしたければ、東京の病院を紹介してやるから帰って来いってさ」
「でも、影井は帰りたくないの?」
「今はまだ帰りたくない」

とっても真剣な表情で話す影井からは決心のようなものが感じられて、本気なんだとすぐにわかった。
そして、影井がこんなに大阪にこだわるのはきっとここにいたい理由があるのだろうとも感じた。

「離れたくない人でもいるの?」
「ああ」

えっ。
半分冗談のつもりで言ったのに、まさかこうもすんなり肯定されるとは思っていなくて、私の方が驚いてしまった。
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