俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「夕飯の買い物ついでにデザートも買ってこようか?そうだ、ドーナツを買って来るよ」
「え、いいの?」
影井の言葉に、単純な私はつい笑顔になった。

離島の田舎町で育った私にはテレビに映るドーナツやハンバーガーやフライドチキンが夢の食べ物だった。
島には全国チェーンのファーストフード店どころかコンビニすらなかったから、他の人には珍しくもないドーナツが私にとってはご馳走なのだ。

「ちゃんとドーナツを買ってくるから、碧も早く仕事を終わらせて帰って来い」
「うん」

考えてみれば、この半月で私の生活はかなり変化した。
医者って仕事は人間相手だし人の命を扱っているわけで、自分の都合で早く終わらせられるってものではないけれど、影井と一緒に暮らすようになってから私の終業時間は確実に早くなった。
自分でも気が付かないうちに、早く帰ろうという意識が働いているのだろうと思う。
そして、同居を始めた時から『碧』と名前で呼ばれるようになったことで影井との距離も少しだけ近くなった気がする。
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