俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「あ、そうだ、薬は持ったか?」
「え?」

子供の頃重度の喘息を患っていた私は今でも定期的に診察を受けている。
でも、ここ数年は経過観察の受診だけで継続して飲んでいる薬もないし、私としてはほぼ完治したつもりでいるから発作時に使う吸入薬を持って歩くこともしなくなっていた。
それなのに影井は心配して、毎日声をかけてくる。

「もし発作が起きたらどうするんだ」
「大丈夫だよ。ここ数年発作は起きていないし、調子が悪ければすぐに受診するから」

成長するにしたがって私は丈夫にもなってきたし、実際大学に入ってからは軽い発作が数回起きただけで大事には至っていない。
それに、自分の体調は医者である私が一番よくわかっている。

「ダメだ。ほら持って行って」
「う、うん」

最近ではこれがいつものルーティーン。
影井って実は超過保護なのかもしれないと最近私も気が付いた。
でも、誰かに心配してもらうってことは決して嫌な気持ちではなくて、どちらかというとこの生活に慣れていく自分が一番怖いなと感じている。
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