俺様同期の溺愛が誰にも止められない
プライベートでは色々あるものの、職場での私に大きな変化はない。
無口で大人しく、存在感の薄い内科医とし私は淡々と仕事をこなしていた。
ただ違うことと言えば、救命に呼ばれた時や廊下ですれ違った時の影井の態度。
今までだったらわざわざ声をかけるようなことはなかったのに、最近は必ず声をかけて一言二言話をしていく。
とは言えあくまでも同期としての会話で、家にいるときのように名前呼びするようなことはないから周囲に同居がバレることはない。

「あれ、碧先生今日の昼食はおにぎりですか?」

お昼の時間、いつものように休憩室で昼食を食べていると、病棟のスタッフに声をかけられた。

「うん、サザエご飯を作ったから持ってきたのよ」
「うわー、美味しそう」

「そう言えば、今日は影井先生もお弁当持参だったらしいわ」
「それ、私も聞いた。影井先生って彼女はいないって言っていたはずなのにって、救命の看護師たちも騒いでたわ」
その場にいたスタッフたちは影井の話で盛り上がっている。

やっぱりお弁当はまずかったかな。
それに、自分の分はおにぎりだけにしてよかった。

「碧先生、何か知ってますか?」
「え、私が?」
後ろめたい気持ちがある分、うろたえてしまった。

「影井先生とは同期だから、何か知っているのかなって思ったんですが」

ん?みんなの視線が私に向いている。
これは困ったぞ。
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