俺様同期の溺愛が誰にも止められない
私は決して優秀な人間ではないと思う。
要領も悪いし、手早くもない。それでもせめて正確さだけはと丁寧な仕事を心がけている。
だから、ミスや事故も多くはないはずだった。しかし・・・最近の私はミスが続いている。

「碧」
え?

ある日の午後のカテーテル検査。
優紀の声で我に帰ると、持っている器具のサイズが微妙に合っていない。
これではいけないと器具を交換しようとすると、すでに横から高杉先生の手が出ていた。

「すみません」
検査中なのに、つい考え事をしてしまった。

「こっちはするから、バイタル確認して次の指示をお願いします」
「はい」

あーあ、これが最近のパターン。
難しい手技や検査には複数の医師が入るしみんなで分担して作業をするのだから、臨機応変に挑めばいい。それはわかっているのだけれど、最近の私は空回りすることが多い。
もちろん一人でこなせずに高杉先生に手を出させてしまう私が一番いけないのだけれど、飯島先生ならもう少し私を待ってくれてペースに合わせてくれた。
これじゃあいつまでたっても私は半人前のまま。
そんなジレンマの中にいた。

「ボーっとしないで」
「は、はい」

ああ、また。
研修医も終わり、今度は指導する立場にならないといけないのに、進歩しないままだ。
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