俺様同期の溺愛が誰にも止められない
同期会を抜け出して帰宅してからすでに30分は経ったのに、私も影井も帰って来た服のままソファーに座ったきり動けないでいた。

「改めて聞くけれど、お前にとって俺はただの同期なのか?」
沈黙にたまりかねたように影井が聞いてきた。

「それは・・・」

もちろん最初は住む所を失い必要に迫られてとった行動だった。
元々影井に対する苦手意識があったし、もちろん好かれているなんて想像もしていない。
でも一緒に過ごす時間はとても心地よくて、正直幸せだった。
この生活を失いたくないと思ったのも事実だし、影井と一緒にいることで安心できるとも感じている。
でもなあ・・・

「今までずっと私に意地悪ばかり言ってきたのに、何で急にそんなことを言い出すのよ」

過去の言動があるからこそ、私は影井の言葉を素直には信じられない。

「挫けそうなお前を放っておけなかったんだよ」
「それにしたって・・・」
「俺が強い言葉で叱咤しなかったら、医者になる前に挫折していただろ?」
「そうかもしれないけれど・・・」

一体どんな心理が働けば、好きだと思う相手に意地悪ができるって言うんだろうか。
私にはどうしても理解できなくて、冷めた視線を影井に向けていた。
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