俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「俺が初めて碧を意識したのは大学一年のペーパーテストの時。それまで成績では誰にも負けないと思っていた俺に勝った初めての奴が女子だと聞いて驚いたのが最初だった。でも、会ってみて、もっと驚いたんだ」
「でしょうね」

学生時代からペーパーテストでは良い成績を取れるのに、要領の悪さと不器用さから実習になると成績は最下位。そのギャップがおかしいと言われ続けてきた。
きっと影井も驚いたことだろう。

「最初はこいつおかしいんじゃないかと思ったよ。でも、これが水野碧の素なんだとすぐに気づいた。そしてどれだけ頑張ってもうまくいかないのに、それでも決して手を抜かないお前に衝撃を受けた。碧は気づいていなかっただろうが、俺はずっとお前のことを目で追っていた。碧が飯島先生を思い続けたように、俺は碧を見ていた」

私は何も返事ができなかった。
思えば、学生時代は勉強に必死で友人と遊んだ記憶もない。
ただひたすらに医学部に入ることだけを目指し、大学生になると医者になることだけを考えていた。
人一倍不器用でどれだけ頑張っても落第ギリギリでついていくのが必死だったから、まともな恋愛なんてした覚えもない。

「なんで私なの?」

影井ならもっと綺麗で素敵な女の子がたくさんいるのに、にわかには信じられない。
< 85 / 198 >

この作品をシェア

pagetop