俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「そう言えば、大学二年の時実習のレポートが出せなくて落第しそうになったことがあっただろ?」

しばらく考え込んでいた影井はなぜか大学時代の話を始めた。

「ああ、うん。そんなことがあったね」

担当の先生が意地悪で私は実習のデータが取れなかったんだ。
おかげで私一人レポートが出せなくて・・・

「あの時、提出ギリギリに実習のデータを送ってもらっただろう?」
「そうそう。普段はそんなに親しくしていない子からだったけれど、予備にとっていたデータだからってもらって助かったの」
あれがなければ落第していた。

「あれは俺だ」
「嘘、だって・・・」
同期の女子の名前で送られてきたのに。

「もし俺からだって聞いたら素直に受け取らないだろ?」
「それは・・・」
否定できない。

「3年の夏、ホームシックになっているお前に帰省の飛行機チケットを用意したのも俺だ」
「あれば優紀が、もうすぐマイルが消えるから一緒に旅行に行こうと言ってくれたのよ」

さすがに申し訳ないと思ったけれど、せっかくなら私の実家に行こうと言われ2人で出かけたんだった。

「それから卒業試験の日。お前遅刻しただろ?」
「ああ・・・うん。」
当時はバイトで忙しくて、その上試験勉強もあって睡眠時間が取れなかった。
大学の卒業試験の日も朝方まで勉強して、少しだけ睡眠をとろうとして寝過ごしてしまったんだ。
目が覚めたのは開始時間ギリギリでもうだめだと思いながら大学に走ったら、なぜかその日に限って火災報知機の不具合がありその処理の為に試験が遅れていた。

「もしかして・・・」
「そう、俺の仕業」

なんともないことのように言う影井だけれど、もしバレれていば影井自身も卒業できないところだった。

「なんでそんなことをしたの」

下手をしたら影井に人生だって変わってしまったかもしれないのに。

「それは・・・碧が好きだから」
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