片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして
『休日出勤を代わって下さい』

 後輩は簡潔な内容に謝るポーズをしたスタンプを添え、明日の出勤が難しいと伝えてくる。
 私が残業を引き受ける条件で出勤をお願いしていたのに……。

『明日は私も用事があるので交代できません。部長に報告して下さい』

 遅い時間ではあるが引き受けられない旨を送信しておく。仕事の内容的には私でも処理は可能だし、予定が無ければ代わった。ただ明日は駄目、絶対に駄目だ。

 と、すぐに既読マークと返信がつく。

『先輩、お願いします! 明日、彼からプロポーズされると思うんです。仕事に行ったら予定が狂ってしまいます!』

 プロポーズ、その単語に指先が止まる。

 後輩には年上の恋人がおり、デートの度に私へ残業を代わって欲しいと言う。部長は業務時間内に終えられる仕事量を任せているのに、だ。
 後輩の身勝手な要求など突っぱねてしまえばいいものの、プロポーズを引き合いに出されると罪悪感が生まれる。後輩だけでなく相手も色々支度しているに違いない。
< 20 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop