しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~

「どういうことなの……!?」

 レッスン途中の教室から血相を変えた和歌子が飛び出してくる。和歌子は受付の惨状を目にした瞬間、ポケットからスマホを取り出し電話をかけ始めた。

「もしもし!警察ですか!?」

 警察の到着を待つ間も、彼女の暴走は止まらなかった。
 他の講師がビルに常駐する警備員を呼び、三人がかりでようやく取り押さえることができた。
 身柄を警察官に引き渡される際、彼女は狂ったように笑っていた。

「あの女がいけないのよ!澄ました顔でひとの夫に手を出すんだから!ザマアミロ!」

 衣都も警察から事情を聞かれたが、一体何が起きているのかさっぱりわからなかった。
 
 女性が暴れた理由が分かったのは、更に二日後のことだった。
 先日の出来事を鑑みて、週明けまで臨時休業となったにも関わらず、衣都は和歌子から教室に呼び出された。

「わざわざ呼び出してごめんなさいね、衣都先生」
「和歌子先生……」

 数日前のことなのに、和歌子の顔には疲労が色濃く残っていた。心なしかやつれたようにも見える。
 和歌子は応接室スペースの椅子に腰掛けるようにすすめてくれた。

< 104 / 157 >

この作品をシェア

pagetop