財閥御曹司は最愛の君と極上の愛を奏でる

「今日、和歌子先生から連絡があってね。わざわざ丁寧に謝罪してくださったよ」

 薄らと笑みを浮かべているのが、なおのこと恐ろしい。
 和歌子から謝罪を受けた響がどう感じたのか、想像に難くない。
 衣都が何の相談もせずにいたことを、響は静かに怒っていた。

「黙っていてごめんなさい……」

 今更遅いとはわかっていても、謝らずにはいられなかった。

「他に隠していることはない?衣都の様子がおかしくなったのは、教室を休み始める前からだよね?」

 衣都が口を噤むと、響は悲しそうに顔を歪めた。
 
「そんなに僕が信用できない?」

 ……違う。
 衣都は自分に自信がないのだ。響に相応しいと胸を張れる自信が足りていない。
 だから、紬の揺さぶりなんかで疑心暗鬼に陥ってしまうのだ。

「発表会の夜、本当に『初めて』だったんですか?」

 衣都は破談を覚悟し、意を決して尋ねた。
 どんな反応をされるのか戦々恐々と待っていると、響は疑いの欠片もないように爽やかに微笑んだ。

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