財閥御曹司は最愛の君と極上の愛を奏でる

 四季杜家に身を寄せた衣都と律は、保守派の三宅一族から随分と恨まれた。
 二人が株式の一部譲渡を行い、M&Aが決定的になると『三宅一族に仇為す裏切り者』と名指しされ、親戚の縁を一方的に切られた。
 嫌がらせのように、下世話な週刊誌に情報をリークされ、校門から尾行されたこともあった。
 紬と彼等に共通しているのは、一度格下だと思った相手には容赦がないということだ。

「彼女は必ず衣都を標的にしてくる」

 響はなんの迷いもなく断言した。

「よくわかりますね?」
「僕と彼女は同類だからね。目的のためなら手段を選ばないし、どうするのが一番効果的か理解している」
「……効果的、ですか?」

 響はクスリと笑い、首を傾げる衣都の手に自分のものを重ねた。

「そうだよ。袖にしたことを後悔させてやりたいのなら、衣都を攻撃するのが一番効果的だ。僕は君のためなら、地面に這いつくばることも厭わないしね」

 そう言うと響は本当に床に片膝をつき、跪いてみせた。
 突然の出来事に衣都はぎょっとし、身構えた。
 プライドの高い響が他人にかしづくなんて、夢でも見ているのでないのか?
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