しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~

 長く続いた意地の張り合いだったが、そろそろ終わりを迎えようとしている。

 ……梅見の会まで一週間を切っている。

 今のところ、綾子から『出席する』という言質はとっていない。
 夫であり、四季杜家総帥の秋雪からの援護も望めない。
 綾子の説得そのものが、四季杜家に嫁ぐための試練のひとつというスタンスなのだ。

(今日が最後のチャンスかもしれない)

 残された時間は少ない。衣都は今日の訪問に一層気合を入れて、臨んでいた。
 バス停から寒空の下を歩くこと十分。ようやく四季杜家の門扉が見えてくる。
 その時、屋敷の門扉から一台の車が出てきて、衣都とすれ違った。
 後部座席に乗っている人の顔を見えなかったが、車種から四季杜家所有の車ではないことはわかった。
 つまり、屋敷から出て行ったのは綾子ではない。
 気合が空回りせずに済んでホッとする。

(それにしても、この時間に来客なんて珍しい……)

 時刻は朝の十時を過ぎたところだ。ランチタイムでも、ティータイムでもない時間帯に、来客がやってくることは四季杜家にとっては珍しい。
 衣都は不思議に思いながらも、いつも通り呼び鈴を鳴らし、家令に門扉を開けてもらった。


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